突然の予期せねぬ怪我や病気から介護が必要になったらどうしましょう。介護のリスクは何も高齢者に限ったことではありません。中高年働き世代、子育て中の方、どなたにもこのようなリスクはあります。介護保険制度を正しく理解しご自身、家族、周りの大事な方々にどうぞ広めていってください。
2000年4月から始まった介護保険制度も周知され、利用される方も年々増えています。少子高齢化の時代のおり、財源に限りがあり満足のいく制度とはいえないかもしれません。何度も改正が繰り返される中、細かな約束ごとや制限が加わり、ご家族や地域の方々のマンパワーも住み慣れた地域で暮らし続けるためには必須となってきています。
3年毎に制度は改正されていきます。改正の中身はサービス内容や取り組み、利用料金など複雑でわかりにくいことが多いです。私の経験や知識が少しでもみなさんのお役に立てれれば幸いです。現役で働くケアマネジャーだからこそ発信できる情報もお伝えしていきますね。
突然介護が必要になったら40代や50代だけど介護保険が使えるの?手続きなど教えて!
予期せね病気や怪我などで突然に介護が必要になったとき、あなたが仕事や家庭など自分の生活を維持しながら家族の介護をするのは大変です。また、お一人で生活されている方につきましては今後の生活にご不安になられるのはなおのこと。
介護が必要になったら65歳から介護保険が使えることは広く知られていますが、40歳から使えることは意外と知らない方も多いのではないでしょうか。実は40歳から介護保険のサービス利用ができるのです。
医療保険に加入されていらっしゃる方で次の「16疾病」により介護状態になられた場合において介護保険でのサービス利用が可能になります。
*生活保護受給の方も保護課の窓口で相談できます
2号被保険者の介護認定にかかる「16疾病」特定疾病とは
40代から「介護認定」を受けるためには「特定疾病により介護や支援が必要とされた人」という要件があります。交通事故や怪我などの特定疾患以外が原因で介護や支援が必要になった場合は保険の対象にはならないことが1号被保険者である65歳以上の方との大きな違いです。
16の特定疾病
- がん(医師が一般に認められている医学的知見にもとづき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知性
- 進行性核状性麻痺・大脳皮質基底核変性およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱菅狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
実際に40代、50代と若い方で介護保険を申請、サービスを利用される方が、増えてきてきています。入院先の病院からの紹介が殆どで、「がん」や「脳血管疾患」の病気にかかられての相談が増えました。配偶者やご両親、ご兄弟などがご相談に来られます。
次のステップ介護保険のプロ ケアマネジャーを見つけよう
ケアマネジャーを早く見つけることのメリット
ケアマネジャーはあなたの介護相談に応じてともに考え、悩み、働いてくれるプロです。初めてで何もわからなくても大丈夫。介護保険の手続方法からサービス開始、生活状況や介護状態に合わせたサービス内容の変更など介護が必要な方、ご家族にとって強い味方となってくれます。
ケアマネジャーはお住まいの地域にある居宅介護支援事業所(ケアプランセンター)に所属しています。情報は、市区町村の介護窓口やホームページで紹介されていますし、既に介護保険サービスを利用している近隣の方にご紹介していただくことも可能です。
まずはお電話で、「ケアマネジャーを探しています」とご相談してみてください。ケアマネジャーがご自宅に伺い、介護保険の必要な手続き、今後の流れについて丁寧に説明します。
対象者の方がご入院中の場合でも入院先に出向き、お話を伺うこともしています。また、病院と連携を取り退院に向けて支援をしていきます。ケアマネジャーを見つけたら相談しやすい関係を築き介護に関する知識の引き出しから良い提案をたくさんしてしてもらいましょう。
介護保険を申請したいけど利用手続きはどこで?
介護保険を利用したい場合にはまず「介護保険の申請」が必要になります。 申請書には介護保険の認定に必要な「認定調査」と「主治医の意見書の作成」のために認定調査の日程調整のための連絡先や「主治医意見書」を作成していただく主治医の氏名や病院の連絡先など記入し市区町村の窓口に提出します。
2号被保険者の方は申請書類と合わせて「医療被保険者証の写し」が必要になります。申請はケアマネジャーが代行することができます。「申請書」もご用意がありますからご安心を。
申請や利用手続きについてはこちらの介護サービスの利用の手続き方法や利用料の負担について知っておきたいことで詳しく説明しています。
キーパーソンを決めておきましょう
ご本人とともに、ケアマネジャーと相談、サービスの決定、今後の方向性について信頼できるご家族にお願いすることが一般的です。ご自身でケアマネジャーを見つけてサービスの相談をしていかれる方もいらっしゃいますが、ご不安がある場合にはご家族にキーパーソンになってもらいましょう。
緊急連絡先や代理人、保証人として入院先などでも必要とされています。介護保険のサービス利用時にも同じく必要です。経験から、キーパーソンをご家族に、とくに働き盛りや子育て中の子供さんたちに頼むことをためらう方がいらっしゃいます。
介護が必要になった今、ご家族との繋がりはとても大切です。どのようなサービスを受けてどのように生活するかをご家族にも一緒に考えてもらいましょう。質の良い介護サービスを受けるためにとても重要なことです。
介護保険の認定がおりたらサービス利用の手続きへ
介護保険の相談や申請を終えると概ね30日後に介護保険者証が届きます。認定結果に応じて使えるサービスの種類や利用量が決まってきます。結果がでましたらケアマネジャーに「ケアプラン」を計画してもらいサービス利用へと進めていきましょう。
ケアプラン作成にはご自身やご家族が直接おこなう「セルフプラン」という方法もありますが保険で対応できるサービスかどうか保険者とのやりとり、サービス事業所への申込み、各種手続きなど知識や労力がかかり複雑です。ケアマネジャーにお願いすることをお勧めします。
日常生活に支障をきたしておりお困りのサービス利用をお急ぎの方へ
介護保険は申請日へ遡りサービス利用ができます。 サービス利用をお急ぎの方は担当のケアマネジャーへ相談し暫定プランを計画してもらいましょう。認定の結果を概ね予測しサービスを発生させます。まずは急ぎ申請を行いましょう。
在宅での生活は難しい 介護施設への入所を検討する方へ
ご自宅で介護サービスを受けていても生活を維持していくことが難しい場合には介護施設の入所を検討していきましょう。私は、常時の見守りや介護、夜間のお世話が頻回に必要になった時、お世話を頼んでいるご家族が介護に疲弊されていらっしゃる時を施設入所を検討する時期だと目安にしています。
利用条件やサービス内容にそれぞれ特徴がみられます。まずはお住まいの地域でどのような施設があるのかを知っておくことが重要です。介護保険で使える施設はいくつかありますので主なものを以下にて6つご紹介いたします。
介護保険で利用できる施設
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 療養型医療施設(療養病床)
- 介護医療院
- 有料老人ホーム
- 経費老人ホーム認知症対応型施設(グループホーム)サービス付き高齢者向け住宅
介護施設の探し方について3つ方法をご紹介
まずはどのような施設があるのか情報を収集しましょう。お住まいの地域やお世話をお願いするご家族の地域から施設を探すことが現実的だと思います。
- 1つめは施設情報がまとめられた冊子を市区町村で手に入れることができます
- 2つめは、ネット上での施設検索
- 3つめは特養や老健以外であれば「施設紹介業者」に相談し地域、利用料金、サービスなど希望条件を相談、紹介や見学手続きをしてもらうことも有効です。
介護度が「要介護3」に満たない方は基本、特別養護老人ホームに入所する事ができず、私も「施設紹介業者」を利用しています。業者さんの得意な地域や施設の情報をこちらの条件に合わせて探してくれます。
業者さんに施設の良いところ、おすすめポイントを聞くことにしています。施設は以外にたくさんありますので迷うことも多く、広告情報よりも生の声が聞けてイメージが湧きやすいですよ。
パンフレットやホームページ上の情報だけでは不十分です。気に入った施設があればまずは見学し、サービスをお任せする環境やお世話になるスタッフ、アクセス、医療サービスの入り方など実際に見て、聞いて、条件に納得した上で契約していきましょう。
いくつかの施設を見学、検討されることをお勧めします。あわてずに納得がいくまで探してくださいね。
ここで一度 介護を取り巻くさまざまな社会背景について考える
介護するご家族がいらっしゃり、頑張ってきた仕事をやむなく退職される方、中にはご自身が介護状態となり仕事を失う方がいらっしゃいます。家庭環境は実に様々です。介護を行う上で、社会活動をどのように継続するかが課題になってきます。ここでは一度介護を取り巻く社会背景をいくつかご紹介したいと思います。
核家族化が進む中、誰にも相談することなく家族の問題として抱え込み困っていることにさえ気が付かない方がたがいらっしゃることを知ってほしいと思います。周囲が気づいて適切な福祉制度につながって行けば解決の糸口が見つかるかもしれません。
気になるご家庭に出会ったらそっと手を差し伸べてもらえるとありがたいです。そのひとつが「介護保険制度」であるといいなと思います。
老老介護
老老介護とは65歳以上の高齢者が同じく、65歳以上の高齢者を介護している状態を言います。ご夫婦、ご兄弟、親子関係で生活されている場合が含まれます。介護者は、介護による疲れなど身体に対する負担がかかります。
資格を持ったプロの介護職員でも腰を痛めることがあります。高齢者が高齢者を介護することは、介護をする側も介護を必要とする危険性が高いとも言えます。実際に要介護認定を受けておられる方どうしでお互いを支え合って生活されているかたもいらっしゃいます。
また、精神的な負担も大きく、高齢介護者の自殺や要介護者とともに生命を断つ、介護放棄、言葉の暴力などの虐待という報道も相次いでいます。老老介護の負担を軽減する体制づくりが求められています。
認認介護
認認介護とは、認知症の高齢者が同じく認知性高齢者を介護している状態を言います。認知症は、記憶力や判断力などの低下が見られ日常生活に支障がでてきます。
例えば、お薬の飲み間違いにより健康状態に影響が出てくる、お金の管理が難しくなり生活費がうまく回らない、書類の作成や手続きがができなくなり不必要な契約をしてしまう、お鍋を焦がし火事の心配がでてくる、妄想がでて親身に世話をしてくれている家族を疑うなどの症状があり、自分たちの生活を混乱させてしまいます。
ここでも生活をともにするどうしで介護認定を受けている方々がいらっしゃいます。周囲のサポートが必要不可欠になってきます。
ダブルケア
ダブルケアとは親の介護と子育てとを同時に行っている状態のことを言います。自分の家庭のことをしながら、親の介護を行う状況です。中には仕事をしながら子育てや介護に奮闘されている方もいらっしゃることでしょう。時間に追われる生活から心身の負担は大きいいものと容易に想像がつきます。
ヤングケアラー
本来、大人が行うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に子供が行っている状態のことを言います。家族にケアを要する人がいる場合に大人が担うようなケアや責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子供のことを言い、その数は少なくなく社会問題として注目が高まっています。
8050問題
中高年のひきこもり状態の子供を高齢者の親が支援しており、様々な生活課題が山積みになった状況を言います。親子が地域から孤立しており保健、福祉専門機関とも繋がらず、親の入院や要介護をきっかけに把握されることが少なくありません。
まとめ
介護保険制度が利用できるのは65歳以上の高齢者や条件を満たせば40代からの中高年層も利用できるのです。どちらも介護保険の申請を行い、「主治医意見書依頼」、「認定調査」を受けて「介護認定結果」がおりたらサービス利用ができるようになります。
ポイントは、キーパーソンを決めること。ケアマネジャーを早く見つけ、相談先を確保すること。ケアマネジャーが付けば、介護保険の申請手続きから支援してもらえます。
また、介護を提供する場として「在宅サービス」「施設サービス」と大きく分けて2つの方法が存在します。どのような時期から施設サービスへ移行するのが良いかも一緒に悩み、検討してくれます。