介護保険を新規や更新、区分変更などで申請され、利用者様やご家族にお手元に届いた介護保険被保険者証を確認してもらうときに認定結果の「要支援」と「要介護」を見間違える方が多くおられます。感じも似ていますしどちらにも「1」と「2」があります。
区分は一般的には「介護度」と呼ばれています。この介護度によって支給限度額が決まっており利用できるサービスの種類にも違いが生まれます。では「要支援」と「要介護」のちがいや数字で表されている区分の違いは何なのでしょうか。
具体的にどのような違いがあるのかをここで具体的にわかりやすくお伝えいたします。
介護認定の区分や段階はどの様になっているのか?
介護保険の申請を行い、認定調査を受けると概ね30日後には介護保険被保険者証が発行されます。ご自宅に届いた被保険者証には、要介護認定区分や有効期間が印字されています。要支援では2段階、要介護では5段階にわかれています。
「要支援」とはまだ要介護になる前の介護予防ができる状態であると考えられており、「要介護」は現状介護が必要な状態であると考えられています。
大きく分けて3つの違い「非該当」「要支援」「要介護」についてわかる
私達が仕事を通じて利用者様の状態像を表すときによくこの3つを使います。非該当の方を「自立」と言い表したりします。
結果が「非該当」の方や「要支援」の方であれば「地域包括支援センター」の管轄であり、「要介護」の方であれば直接「居宅介護支援事業所」が契約、担当することになります。
非該当(自立)の状態とは
要支援の状態とは
要介護の状態とは
介護区分のそれぞれの状態像について目安や具体的な状態を教えて!
それでは次に介護度別にそれぞれの状態像をみていきましょう。皆さんの介護度は認定調査や主治医の意見書をもって審査会を経て決定されます。私たちケアマネジャーは「要介護3」ときくと、かなり介助が必要な状態であると認識します。
在宅生活で使うサービス利用の量もぐっと上がり、「特別養護老人ホーム」への入所申し込みもできるようになります。施設入所を考える一つの目安とも言えますね。
私が認定調査員をしていてわかった各介護度における状態像をお知らせします。この限りではありませんがご参考までに。
「要支援1」の状態
椅子からの立ち上がり時に机など支えが必要になる。しかし、日常生活上の動作についてほぼ自分で行えている。公共交通機関を利用して外出も制限なく行えている。特に水回りの掃除などの動作に支障を感じており支援が必要な状態。
「要支援2」の状態
自分の身の回りのことは概ね自立している。しかし、立ち上がり、階段昇降などの日常生活動作に一部支援や介助が必要になっている。近隣であれば問題なく外出できるが、遠出の外出を控えるようになる。
浴室やトイレ、キッチンなどの水まわりの掃除、ゴミ出しや買い物などに負担や支障が出ている。入浴動作の浴槽をまたぐことが不安定な状態であるなど。
「要介護1」の状態
椅子からの立ち上がりや歩行が不安定で支えが必要である。日常生活において部分的に介助がが必要な状態。近隣の外出にも不安が出てくる。必要以外の外出を避けるようになる。起き上がりや立ち上がりや歩行に支えがあれば自立できる。
入浴時の洗身や着脱に一部介助が必要になっている。外出するのに負担が出ており杖や歩行器を必要としている。車の乗降など時に介助が必要。
「要介護2」の状態
椅子からの立ち上がりや歩行に支障が出ており、外出に介助が必要となる。排泄動作や入浴動作などは部分的にまたは全てに介助が必要になっている布団での寝起きが難しくなり安全な動作を確保するために電動ベッドが必要になっている。
自宅内外の移動手段にも歩行器や車椅子が必要になる。入浴や排泄動作に一部または全てに介助が必要になっている。外出には介助がいる。
「要介護3」の状態
日中でも横になっている。起き上がりや立上り、歩行がひとりでは行えず介助が必要。入浴動作、排泄動作などかなりの介助を要する状態。思考力や認知力の低下が進んでいる。昼夜を問わず生活全般に介助が必要になり、ひとり暮らしは難しい電動ベッドや車椅子が必要になる。
排泄をトイレで行うことが難しくなりリハビリパンツやおむつの交換に介助を受けている。入浴時の浴槽のまたぎが困難。洗髪や体を洗う介助が必要。着替えがうまく行えずに手伝いを受ける。外出には介助がいる。昼夜を問わず介助が必要になり介助者の負担は大きい。
「要介護4」の状態
寝返りや起き上がりができない。歩行が困難であり食事や排泄などベッド上でケアが行われることがほとんどになる。座位が保てず自宅での入浴が困難となる。昼夜を問わず日常生活全般に介助が必要になり、ひとり暮らしは難しいひとりでは寝返りや起き上がりが難しい。
ベッド上で食事や排泄介助が行われる。入浴には特別な配慮が必要となり特殊浴や清拭が行われる。意思疎通の困難さがみられる。
「要介護5」の状態
ベッド上での生活。寝返りや起き上がりができない。意思疎通が難しい。移動、食事、排泄、入浴など日常生活全般に介助が必要になり、ひとり暮らしは難しい移動が難しくなりベッド上で食事や排泄介助のが行われる。
入浴には特別な配慮が必要となり特殊浴や清拭が行われる。意思疎通ができない。
もうひとつ介護状態の決めてとなる判定基準 「日常生活自立度」とは?
認定調査や主治医意見書のなかで要介護状態を決める基準にしている「日常生活自立度」という指標ががあることをご存知でしょうか。私が行っている認定調査にも記入欄があり該当するランクにチェックをつけています。
日常生活自立度には2つあり障がい高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)と認知症高齢者の日常生活自立度にそれぞれについて判定しています。これは障がいや認知症を持った高齢者の生活状態をを数段階に分けており、障がいのある高齢者は4段階に、認知性のある高齢者は9段階に区分分けされています。
この2つの自立度それぞれを以下で説明いたします。
障がい高齢者の日常生活自立度「寝たきり度」とは?ランクの違い
「寝たきり度」とも呼ばれ4段階に分かれています。高齢者の日常生活自立度を表すものです。これを聞くと、概ねの日常生活においての活動状態がわかります。
ランクJ(生活自立)の状態について
J1
電車やバスなどの公共交通機関を使いかなり遠くまで外出できる。
J2
自宅から徒歩圏内、町内の距離程度の範囲であればへ外出できる。
ランクA(準寝たきり)の状態について
A1
寝たり起きたりはしているものの日中はほとんどベッドから離れて生活する。介助により外出する。
A2
日中も寝たり起きたりの状態ではあるもののベッドから離れている時間が長い。介護者がいても外出の会が少ない。
ランクB(寝たきり)の状態について
B1
ひとりで車いすへ移乗ができる。食事や排泄もベッド上以外で行える。
B2
車いすへの移乗に介助が必要である。
ランクC(寝たきり)の状態について
C1
自分で寝返りが行える。
C2
自分では寝返りも行えない。
認知症高齢者の日常生活自立度とは?ランクの違い
この指標は高齢者の認知症の程度を踏まえた日常生活の自立度を表すものです。ランクは I 、IIa 、IIb、 IIIa 、IIIb、 IV 、V と7段階に分類されています。それぞれの状態を以下に説明いたします。
私たちはこのランクを聞くと概ねの認知度の状態やそれに伴う精神状態がわかります。
「ランクI」の状態について
「ランクII」の状態について
IIa
家庭外で上記ランIIの状態が見られる。
見られる症状と行動の例
たびたび道に迷うとか、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等。
IIb
家庭内でも上記ランクIIの状態が見られる。
見られる症状と行動の例
服薬管理画ができない、電話の応答や訪問者との対応など一人で留守番ができない等。
「ランクIII」の状態について
IIIa
日中をを中心として上記ランクIIIの状態が見られる。
見られる症状と行動の例
着替え、食事、排便・排尿が上手にできない、時間がかかる、やたら物を口にを入れる、ものを拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為など。
IIIb
夜間を中心として上記ランクIIIの状態が見られる。
見られる症状と行動の例
IIIaに同じ。
「ランクIV」の状態について
見られる症状と行動の例
ランクIIIに同じ
「ランクV」の状態について
見られる症状と行動の例
せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動書が継続する状態等。
要支援と要介護区分についてのまとめ
「要支援」とは要介護の前の状態にあり社会活動の参加や程度な運動、バランスのとれた食生活への見直し改善などで介護状態への移行を充分予防できる段階にあります。2段階に区分されており身の回りのことや外出が自分で行えるお元気な状態であることを表しています。
要支援の認定を受けた方は地域包括支援センターが主体となって介護予防の取り組みがなされているところです。介護保険とは別の枠組みで「総合事業」のサービスを受けることになります。
一方で「要介護」とは何らかの介護が必要になっている状態を言います。5段階に区分されており、数字が大きいほど重度を表しています。認定結果を受けた方はケアプランを居宅介護支援事業所が担当します。
介護保険制度の要介護認定では、認定調査員や主治医の意見書などで「障害高齢者の日常生活自立度」や「認知症高齢者の日常生活の自立度」が指標として用いられており、要介護認定における、コンピューターによる一次判定や介護認定審査会における審査判定の際の参考として利用されています。
また私達ケアマネジャーの仕事の上でも、要介護認定結果と合わせて使うことにより更に状態像ががわかりやすく、介護保険のサービス事業所や施設、病院などとの情報共有時にも便利な指標として用いています。
要介護認定には1年から3年間の認定期間がありますが、上記の状態像や指標を参考にしていただき身体状況や介護状況に変化が見られれば、「区分変更」の申請を行い、必要な介護サービスが受けられるようにしていきましょう。
担当ケアマネジャーも変化に気づきタイミングを逃さずに申請手続きを行ってくれるはずです。